クリエイティブな「ビジネス」本
会社員だからあたりまえかもしれないけど、最近、以前はまったく読まなかったビジネス本もをわりと読むようになった。これがけっこう面白い。仕事に役に立つからというよりも(それもあるけど)、今、激動している世の中がどうなっていくのか、ということへの純粋な好奇心。
そんなわけで、まずはウェブ2.0について2冊。
ウェブ2.0につづく3.0がどういう社会なのか。そこではどんなビジネスモデルが予想されるのか。実は「ビジネスモデル」という言葉自体、ずっとクリエイティブ畑にいた僕にはほとんど縁のなかったもので、以前、NYで僕が展覧会をしたときに、ビジネスマンの父親に「で、展覧会の収支はどうなっているんだ?」と聞かれ、「$○○かかって、$○○売れて、$○○の赤字…」という話をしたら、「じゃぁ、ビジネスモデルとしてダメだな」と一刀両断され、「儲けるのが目的だったらアートなんてやらないよ!」と、少し青いことを言っていたことがあった。
- 作者: 佐々木俊尚
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/01/17
- メディア: 新書
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でも、今になって思うとアップルのスティーブジョブしかり、グーグルの創始者しかり…「新しいビジネスモデルをつくる」ということは下手なアーティストより、よっぽどクリエイティブだし、村上隆も「芸術企業論」の中で言っていたようにアートもどうやってお金を回収するかは重要な問題だ。むしろ、アートは価値を飛躍的に増大させる可能性のある「ビジネス」のひとつだと思う。
大切なのは、いかにイノベーティブであるか。海外からの単なる輸入ではなく、本質的に新しいか、独自性があるかないか、思想があるかどうかなのだ。
そんな意味で、去年あたりまで巷をにぎわせていたライブドアや楽天などは前者であり、そこにクリエイティビティがない。最近、楽天が「楽オク」を始めたという広告が出ているけど、これにしたって(よく知らないけど)ヤフオクが既にある中で、2番煎じでしかない。そんなことが辛辣に、この本にいろいろ書いてあって面白い。
- 作者: 田坂広志
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2006/11/23
- メディア: 単行本
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先日の「イノベーター・プロジェクト」でお会いした田坂氏の最新本。まだ読み終えていないんだけど、文字通り「これから何が起こるのか」という75の変化が、情報革命が「革命」であるということから「権力の移行」であるということ、この変化がネット業界だけでなく誰しもに関係のあることなど、わかりやすいキーワード満載で書かれている。
- 作者: 中沢新一,ほぼ日刊イトイ新聞,赤瀬川原平
- 出版社/メーカー: 東京糸井重里事務所
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 単行本
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糸井重里さんの「ほぼ日手帳」を買いに行って、ついでに手に取った中沢新一の新刊本。
こちらもビジネスモデルではないが、ビジネスにも,他のものにも適用できる、という思考モデルについての話。たとえば、人はある事象を「起承転結」というような思考モデルに当てはめて見る癖があるらしいが、この本では紹介するのは、キリスト教に端を発するという、「父」「子」「聖霊」という三位一体モデル。キリスト教はイスラム教と同じく一神教だけど、そこにはこういう3つの要素から成る思考モデルが内包されていたらしい。
父と子はわかるけど、「聖霊」って何よと思ったけど、まず「父」は、キリストの父/論理とか一貫性、「子」はキリスト/それを受け継ぐもの預言者、聖霊というのが曲者なのだけど、不確定性とか増殖性のような動的なもの(ここにも、こういう偶然性のようなものがプロットされていたのか…)。ちなみにイスラム教にはこういうのはなく、神はとにかく、ひとつらしい。そして、キリスト教にはもともとこの三位一体モデルが組み込まれていたおかげで、西欧のキリスト教社会は、価値(資本)が増殖する資本主義社会に発展することが出来たらしい…。
この思考モデル、本の終わりでいろんな人が自分の身の回りに当てはめていたように、自分の仕事とか、いろんなものに当てはめることが出来て、そこで足りないものなどが見えてきて面白い。それにしても、なんだか最近、ブランドの構成図とか、人の関係図とか…自分でも何かしら関係図とかダイヤグラムのようなものをノートに書いていることが多いな…。