ビル・ヴィオラ「はつゆめ」
昨日、森美術館で終了間近だったビル・ヴィオラの個展に行ってきた。彼の作品は以前にもいくつか見たことがあって、それほど好きなわけではないけれど、一応はビデオアートではビッグネーム、一応は代表作を一挙に見る機会として行って来た。
会場では休日のせいか、思いのほか多めの人出。一瞬、となりでやっている福山雅治の写真展目当てかと思いきや、意外にもほとんどの人がビル・ヴィオラを見に来た様子。立地のせいもあるけど、現代美術の展示にこれだけの人が集まるのは、海外に近づいて来た感じで嬉しい。
感想としては、まず、マッチョだということ。モニュメンタルにでかいスクリーン。轟音。その割には画像の解像度が今イチだったり、男が火に包まれる作品での人間(おそらく作家本人)を包む火が合成だと丸見えなのが気になる。こういう技術面の甘さは、現代アートのビデオ作品によくあるけど、大きなサイズでいかにもハイアートとして見せようとしているだけに気になる。
もうひとつは、彼自身日本に滞在経験があり、禅寺などで大きな影響を受けたらしいけど、作品はとても二元論的だということ。前述の作品にしても、人が「水と火」に包まれる映像だし、別の作品「天と地」も、タイトルもそうだし、映像自体、上下向かい合わせに置かれたモニターに、赤ちゃんと老婆の映像がそれぞれ映しだされているというもの。対称的なものがそのまま、ほとんどがスローモーションという手法で作品化されている。「あ、またスローモーションだ…」という観客たちのつぶやきをたくさん聞いた。これだけスローモーションの映像を立て続けに見ること自体は珍しい体験ではある。時には80倍近くというスーパースロモーションだけに、しばらく見ていても写真か映像か判別がつかないほど。ただじっと見ていると、「あ、動いている」と分かる映像というのは、それはそれで新鮮ではあった。
ただ、以前に行ったうちの妻が言っていたように、この個展、そのほとんどがビデオを見せる暗い空間ということもあって、都会の真ん中で仮眠をとったり、瞑想するには絶好の場所だっただろう。彼が日本で影響を受けたというのは、その辺りだったのかと思いたくなる。