KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

再会ー杉本博司+ソフィ・カル

火曜日の夕方、写真家の杉本博司とソフィ・カルのコラボ展のオープニングに行ってきた。場所は、新装オープンした小柳ギャラリー。ふだん行かない銀座でちょっと迷いながら、なんとか到着。広い。ミニマル。今日は裏のオフィスも杉本さんの写真とともに開放。内装も杉本さんがデザインしたとか。

展示の方は、さすがは日本とフランスの誇る巨匠コンセプチュアル写真家といったところか。お馴染みの端正な額に、端正な写真。ソフィの様々な企画に杉本さんが写真を提供するという感じ。以前にNYで見て日本の雑誌に紹介したソフィとポール・オースターのコラボ「Double Game」に比べると、二人の絡み方はちょっと薄い。今回はソフィが盲人に美とはなにか聞く「blind」シリーズ、盗まれた絵について管理人が証言する「missing」のシリーズなど。


本当の話

Sophie Calle: Did You See Me?
Double Game

僕が気に入ったのは、入口から入ってすぐにあった初めて見る作品。
真ん中にあるのはイリヤ・ソナベント(NYの大御所ギャラリスト)の肖像。
その脇に、二つの文章がある。細部は忘れたけど、だいたいこんな感じだ。

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私はその日、イリヤ・ソナベントに会いました。彼女は、若くて無名のアーティストだった私に、「あなたは賢いわね(smart)。是非うちで個展をさせてあげましょう」といった。その日以来26年間、彼女とのつきあいは続いている。
杉本博司

私はその日、イリヤ・ソナベントに会いました。彼女は、若くて無名のアーティストだった私に、「あなたは頭がいいわね(inteligent)。何か別の仕事が向いてるんじゃないかしら」といった。私と彼女のつきあいは、その6分間で終わった。
ソフィ・カル
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たぶん本当のことなんだろう。二人のアーティストと一人のギャラリストの対照的な出会い。こういう出会いは無数にあるんだろうけど、今ここでその二人が一緒に展示をしているということ。そういう、積み重なった偶然に惹かれる。


歴史の歴史

会場には杉本さんがいた。彼の元アシスタントで最近日本に帰ってきたリイチくんに紹介され、NYのスタジオで会って以来久しぶりにちょこっと話す。ただ、あのときもそうだったけど、僕は杉本さんを前にするといつも話すことがない。
彼の作品があまりにクリアなこと、尊敬もしてるし理解もしてるつもりだから、何の疑問も湧かないのだ。話すことがない。好きな女の子を前にして、どぎまぎしてしまうような感じ。ほんとはただ、遠くから取り巻いてるだけで十分なのだ。

あの時NYから帰る直前だった僕に、杉本さんは言った。
「そうか、じゃ諦めて帰るんだ…」
その言い方にちょっとカチンときた僕は言った。
「諦めてなんかいないっす。続けるために帰るんです。」
そのことを杉本さんに話すと
「そんなことあったっけ…。」
(笑)あれから約3年半、杉本さんは言った、
「でも今は、日本の方が面白いかもね。NYは…。」
あのときのちょっと皮肉屋な印象は影をひそめ、
この日は終始穏やかだった。


その後、リイチくんと同じく元アシスタントだったダイさん、写真家のタクヤくんら5人くらいで近所の焼き鳥屋へ。リイチくんとはひさしぶりだ。新作を見せてもらったりして盛り上がる。また一人、いい仲間が帰ってきた。