KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

毒舌なのに憎めない語り口

怒濤のペースで本を出している内田樹氏による、ブログのテクストをまとめた新刊。内田氏のブログはふだんからi-Googleで時折チェックしてるので内容は既に読んだものもあったけど、日本の今の諸処の問題について、独自のちゃぶ台をひっくり返すような意見が書かれている。改めて興味深いと思ったのが、ふつうはちゃぶ台をひっくり返すような違う意見を言うと、場が白けたりバッシングにあったりするものだけど、そうでもなさそうに思える内田氏の構造主義に根ざした語り口である。

まえがきの中で内田氏は、この本に書かれていることは「自分が書いた覚えのないテクスト」であると書いている。というのは、ブログに書いたものを編集者がコピペしたものだし、そもそも「人間が語るときにそのなかで語っているのは他者であり、人間が何かをしているときその行動を律しているのは主体性ではなく構造である、というのが本書の主な主張である」ということ。

氏のいうとおり、僕が今、ここで書いていることも誰かがすでに語ったことの再編集でしかない。ただ、バッシングする側にしてみれば、ちゃぶ台をひっくり返した当人が、自分ではなく他者が書いたものだと言っているのだから、追求のしどころがわからなくなる。日本語での議論は、どうしても言っている内容と発言者がどうしても貼りついてしまうことが多いので、尚更、有効だといえる。主張の内容と立ち位置だけははっきりとさせながら、バッシングも場が白けることもぬるりとかわしてしまう氏の語り口。気持ちよく自分の本音や毒舌を言うための有効な護身術に思える。

こんな日本でよかったね─構造主義的日本論 (木星叢書)

こんな日本でよかったね─構造主義的日本論 (木星叢書)