KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

交響するコミューンと月と皆既日食

最近たまたま触れた思想、本、映画、写真展……違うものの間に次々と響き合う連鎖を感じて、脳内でつながる糸をたぐるのが楽しいこの頃。

まずは最近、雑誌「広告」の次号に向けてお話を聞いた社会学者、見田宗介さんの「交響するコミューン」「幸福感受性」というキーワード。前者は見田氏が30年ほども前に別名で出版した「気流の鳴る音」にある概念だが、あくまで人間の自由に価値をおいた考え方は、左も右もない金融バブルが弾けた今も十分有効だと思うし、「感動する能力・感受性の解放がないと人は永久に満足できない」「多様な人が共存する中でより多くの幸福を見いだすためには、感受性の解放が重要」ということは、僕自身が最近関心をもっている別府での「混浴温泉世界」や越後妻有アートトリエンナーレなど、アートを介した地方の未来やLOCAL SOURCEと響き合う。

気流の鳴る音―交響するコミューン (ちくま学芸文庫)

気流の鳴る音―交響するコミューン (ちくま学芸文庫)

「古いものや、ダサく見えるものでも感受性さえ変われば強みになる」とか、「ありきたりの日常も見方を変えれば非日常になる」なんて言い古された物言いだけど、時代が急展開している中でやっぱり大切だし、それを引き出すものの一つがアートなのだと思う。「交響」と聞いて思い出すのは、昨年はまった映画「GAIA SYMPHONYー地球交響曲」。「世界のすべては響き合っている」という考えからつくられているこの映画もきっとどこかで「気流の鳴る音」とつながっているはず。

地球交響曲第三番 魂の旅

地球交響曲第三番 魂の旅

1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

そして(ブックオフに流れてくるのを)待ちきれずに読んだ村上春樹の新作「1Q84」。内田樹さんも「読み終わるのが惜しい」と書いていたが、まったく同感。かなり分厚い2冊にも関わらず、大事に大事にぺージをめくる。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」「ねじまき鳥クロニクル」と並ぶ氏の最高傑作だと思う。この小説にもコミューンが登場するが、コミューンといえば、昨年見たあまりにもリアルな映画「実録浅間山荘」を思い出す。

1Q84」で別世界を表すシンボルとして登場する2つの月は、僕の中では先日行った友人の写真家、有高唯之の個展、と響き合う。皆既日食という自然のスペクタクルを見に行った彼が言ってたのも、「月が太陽に重なる瞬間、世界が変わるんですよ」ということだった。月が太陽に重なる数分の間、あたりが急に暗くなって360度夕焼け状態になるとか。今月22日の皆既日食は残念ながら見に行けない!けど、一生のうちにいつか皆既日食を実際に見てみたい!

だらだらと連想したままに書いてきたけど、そういえば誰かに、編集とは異なる事物の間に見えない関係を見いだすことだと聞いたことがある。「1Q84」を読んでいて思ったのも、小説というのはさまざまな無関係な情報を(村上春樹の場合はその無数の独特な比喩も含めて)絶妙に一本の物語の中に編集していくということで、そんな意味で先日観た映画に出てきた綱渡り士、フィリップ・プティにもつながる。