KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

「鳥の飛ぶ高さ」青年団国際演劇交流プロジェクト

今年初頭、JTのCMに出演頂いた畑中友仁さんに招待いただいて、平田オリザさんが主宰する青年団による国際演劇交流プロジェクト2009・日仏交流企画『鳥の飛ぶ高さ』を観に行った。僕自身、演劇については本当に門外漢で、ほんの数えるほどしか観てないのだけど(最後に見たのが数年前のケラリーノ・サンドロビッチ演出による『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?』)、スピーディーで、重層的で、いろいろ考えさせれて面白かった。

関係者のプロフィールを見てみると、元フランス・ジレット社の社長であり、「日常の演劇」の旗手としてフランス演劇界を代表するミシェル・ヴィナヴェール氏が30年前に上演した脚本を「静かな演劇」で知られる平田オリザ氏が現代の日本に置き換えて書き直したもの。演出はフランスの次世代を担うアルノー・ムニエ氏。同族経営の日本の便器メーカーが海外の「ハゲタカファンド→鳥の飛ぶ高さ」に狙われる中でのドタバタを描いた経済喜劇。

外資の攻勢を受ける日本の中小便器メーカー、その昔ながらの営業活動から始まり(実際、中小企業を継いだ僕の知人も2人もこうして外資に乗っ取られた)、フランス遊学帰りの社長の息子が親父の跡を継ぎ、社員の創造性を大切に再生していくというビジネスを舞台にした基本ストーリーに、同族経営企業にありがちな兄弟で争う醜い社長ポスト争いや、日本の古代神話(社員の一人の教養趣味という設定)、社員の娘の許嫁がかつて経験したルワンダ大虐殺の話(映画「ホテル・ルワンダ」に詳しい)など、時空も異なる複数のストーリーが重層的に進んで行く。

書いていてもなかなかうまく整理できませんが、とにかく映画のように複数のシーンが一つのステージ内で時間差で展開するので、異なる文脈の新しいつながりが刺激的。外資による日本企業の乗っ取りが単純な悪としてではなく、古代神話にもある日本の諸外国の受け入れと重ねてみたり、便器の機能面ばかり考えていた企業に登場した仏コンサルが、排泄行為というタブーにあるエロスに注目させたりと、ブレストやワークショップ手法もかなりリアル。

そんな中で、社員の一人、遠藤一郎役(全く関係ないが、先日会った未来美術家と同姓同名/TSで次回インタビューアップ予定)の畑中さんも、とても彼らしい演じぶりでした。とにかく現代演劇って面白い!と気づかされた一作。本日最終日でしたが、今後また平田オリザさんの舞台、観に行きたいものです。畑中さん、お疲れさまでした&ありがとうございました!