KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

不確定性という自由/土屋貴哉「マイナーチェンジ」

この日は夕方から過去にTSでも紹介した2人の作家のオープニングをはしご。
まずは、土屋貴哉の個展、「マイナーチェンジ」@SWITCH POINTへ。タイトルに「マイナーチェンジ」とあるが、ほぼ全部新作が並ぶ個展。リーマンショックで急変動する価格が作る美しい図柄「Gold」「Light Crude Oil」、増え続けて機能不全になるカーソル「ザ・カーソルズ」、デスクトップの裏側に入り込んでしまったような不思議な気分になる「Back Room」、敵と味方が交互に入れ替わることで勝ち組も負け組もないオセロ「二重スパイ」、リズミカルに淡々と続くマトリョーシカの入れ替えゲーム「It's a small world」……

そんな作品を見ていて浮かんできたのは「不確定性」という言葉。元々は、人間が観測する時には常に不確定性がつきまとうという、科学の根底を揺らしてしまった考え方だが、逆に言えば、決まりきったように見えるものにも常に不確定性が潜んでいる=自由があるということ。アートの快楽とはそういうものだと思う。かつて僕は彼の作品のことを「脳みそへのデザート」と書いたが、相変わらず静かにラディカルで、しかも一つ一つ丁寧に作られていて美しい。



「二重スパイ」オノヨーコの真っ白なチェスの作品を思わせる、敵と味方が交互に入れ替わり、裏も表もない、勝ち組も負け組もないオセロゲーム。

「It's a small world」リズミカルに淡々と続くマトリョーシカの入れ替えゲーム。背景の花が意味なく美しい。