KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

無名の人々の物語と偶然性

ナショナル・ストーリー・プロジェクト

ナショナル・ストーリー・プロジェクト

人は何らかの物語を持ってないと生きていけないとよく言われるけど、この本は作家のポール・オースターがラジオ番組への出演をきっかけに、誰もが一生の間に一つくらいは持っている大切な話を募集して選んだものを朗読したもの。無名の人の180の実話。

様々な実話を読んでいて感じたのは、ずっと昔に祖国で無くなったはずの祖父の手帖に亡命した先のアメリカの古道具屋に行って「たまたま」出会ったとか、最近出会って好きになった人が、実は家族と昔深い関係に会った人の息子だったとか……何らかの「偶然」が作用したものが多いということ。それもちょっとした偶然じゃなくて、ほとんどあり得ないような偶然。だからこそ、体験した人はそれをドキドキして必然や運命だと思ったり、「神の仕業」だと思ったりして深く心に刻まれるのだろう。

逆に、世の中にあるほとんどのものは因果関係からなっているとも言える。「〜努力した結果うまくいった」などの成功談はみなそうだし、「神はサイコロを振らない」と言ったアインシュタインなどの科学者はそんな因果関係を突き詰めた代表とも言える。南方熊楠は偶然性を、関係ないように見える複数の因果関係の系が交わることだというようにマンダラ図を描いて示した。

カオス理論などで「海のこちら側で蝶が羽を揺らすと、海の反対側で竜巻が起こる」というバタフライ効果なども、地球上のすべてはつながっているという因果関係の考え方。先日観た「ガインシンフォニー」の基本メッセージも、この地球は一つの生命体であり、すべてはつながりあっているからこそ、それを乱していはいけないというものだった。

ほんとのところ、この世界に偶然性はあるのか、それとも全ては必然なのか。それとも、すべては見る人がそれをどう捉えるかということにすぎないのか。偶然性が気になるこの頃。