KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

六本木クロッシングー未来への脈動@森美術館

昨晩、先日始まったばかりの展示「六本木クロッシング」を見に行ってきました。平日夜の10時までやってるのはうれしい。恵比寿の写真美術館や東京都現代美術館も(遠いんだし)夕方以降にも見られるようにしてくれると、働いてる人も見に行きやすくていいんだけど。お役所だから仕方ない?

題名どおり、交差、横断性、異種勾配などをテーマに現代の日本のアートを紹介しようというこのグループ展。現代アートの作家だけでなく、辻川幸一郎、宇川直弘、CM出身の佐藤雅彦、ゲームの伊藤ガビンさん、アニメ作家など個人としても複数のジャンルを越境する作家たち36組が集められた(アート市場が確立していない)現代の日本らしい、東京らしい展示だと思います。ミックス感、カオス感。以前デビッド・ディヒーリさんの企画で参加させてもらった「Tokyo Art Jungle」やPS1(NY)で開催された「Buzz Club」を思い出しました。懐かしい。元はといえば僕自身の名前をカタカナにしたのも、以前『A』という雑誌をやってた頃、海外に住んでいた自分の異種勾配感、雑種性からそうしたのでした。

今回の展示全体を通して感じたのは、異様に繊細な作業による過剰なディティールなど、オプアート的な視覚的目眩を誘う作品が目立ったということ。こういう作風は、この夏行ってきたドイツのドクメンタやミュンスターでは見られなかったもので、(今回の展示にはなかったが)村上隆にも通じる今の日本の表現の特徴の一つと言えるかもしれない。手先が起用で綿密な工業製品でも知られてきたテクノな日本人が表現に向かうとこうなる…というところだろうか。視覚芸術だけに視覚的にドキドキと楽しませてくれるのはいいんだけど、その一方で作品のメッセージ性や批評性で深く考えさせられたり、心にぐさっと刺さるまではいかないことに不満なのは欲張り過ぎか…。

そんな中で、僕は宇川直弘による「カトリーヌ台風の風を再現した中を世界中の札びらが舞う」という作品の中に入るのを楽しみにしていたんだけど、残念ながら入場不可。風も弱かった。セキュリティー上の問題か。それでも東京の夜景を背景に札束が舞うさまが、六本木ヒルズ・森ビルという場所にやけに合っていてバブルで気持ちよし。→台風を生け捕った男/宇川直弘インタビュー

その他、印象に残った作品を思いつくままに挙げてみます。空中に吊るされた、水面に映った金閣寺を上下対称に再現した模型作品。イメージでしかないものを見る奇妙な感覚、数学的な美しさ。そして、すべて手書きで新聞を書き写した作品(今年のカンヌ広告祭でメディアグランプリを受賞したモンブランの新聞広告とほぼ同じ。こちらはもっと昔の作品ですが。)や、金網を手書きで延々と描いた作品もすごい…おつかれさまです。名和晃平の巨大な立体作品もクールで意味不明な感じがインパクト大でした。TSで最初にインタビューした田中偉一郎(→TS001)の新作群も相変わらず脱力系の笑いと、「刺身魚拓」「赤いワンピース」「ひも時計」などネーミングセンスも冴え、たくさんの人が声を上げて笑ってました。辻川幸一郎さんのPVもやはりこういう場でも見ても群を抜く完成度。さすがです。伊藤ガビンさんの「始まりも終わりもない、目的もないゲーム」の作品も、以前に自分でも同じコンセプトでサッカーをテーマに作品をつくったことがありググッと共感。ガビンさんにはお会いしたこともないけど「無重力スポーツ」で被っていたのを思い出しました。

とにもかくにも、見応えあるのでおすすめ。面白くない!と思っても、終わってから見られる52階の展望台はいつ見ても壮観。少なくとも半額は元をとれるのでご安心を。