KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

「不況」とはいっても…

ここしばらく、会社で出してる季刊誌『広告』の次号のリニューアル創刊号の企画に携わっていることもあって、リーマンショック以降やら、それ以前から世の中で起こりつつある大きな変化について、ない頭をめぐらしつつ、今、世界全体ががらがらと変わっているのを至るところで感じている。

今日もスイスからの飛行機で日本の新聞を見ると、トヨタに続いて、僕も担当していた某車会社のリストラやら売り上げ減やらというニュース。僕もちょうど今、自分の車を(夫婦とも運転好きでないことがついに判明…)後輩に売ろうとしてるけど、まわりを見ても以前ほど車好きな人の話を聞かなくなったような気がするし、エコエコ言われる今、車にブイブイ乗るのとかも時代的にかっこわるいような気さえする(だからというわけでもないが、一応持っていた愛車は後輩に売ることになりました)。

自動車業界だけでなく、ソニーなど日本をひっぱってきた経済界は軒並み暗いニュースだらけ。来年はきっと僕らくらいの大会社の正社員もいよいよ首を切られるニュースで賑わうのだろう。先日もアメリカの社会起業家たちの本を読んだけど、TSでも一部紹介している彼らは、そんな状況から一足先に足を洗った人たちだとも言える。

チェンジメーカー~社会起業家が世の中を変える

チェンジメーカー~社会起業家が世の中を変える

いづれにせよ、経済が日本を引っ張ってきた時代から、文化や社会のことがもっともっと重要視される時代になってきていることは間違いないだろう。日本も、僕の嫌いな某ビール会社のように「No.1」を目指して右肩上がりイケイケな感じじゃなくて、イタリアやイギリスのように経済成長はしなくても、じっくり深く文化を作り、大切にしていくような国になっていくのだろう。お金よりも、一人一人の幸せとか生き方が大切になってくるのだ(…などと思いながら、以前だったら絶対手にしなかった生き方本なんぞ買って読んでいたところ。シンクロするかのように、今月のBRUTUSも「生き方特集」だ。)

軽くなる生き方

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史上最強の人生戦略マニュアル

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↑ちなみにビジネス書界で売れっ子の勝間氏が一番影響を受けたというこの本、たしかに真理もありそうだし、このとおりにすれば「成功」するのかもしれないけど、どこかその発想の根本にある西洋・合理主義的な傲慢さが鼻につく。

そう考えると「戦後最大の不況」とか言っても、世の中としてはよっぽどマトモで、面白い、良い方に進んでいるんじゃないかという気もしてくる。もっとも、そんな風に楽観的に言ってられるのも僕が守られた立場にいるからだろうけど、実際にそう思うのだからしょうがない。

ちなみに五木寛之さんはそんな時代だからこそ「覚悟」を決めなさいと言っている。覚悟とは、明らかに究めるということらしい。日本という国自体が人に例えれば戦後に生まれ、高度成長という青春期とバブル期を経て、小泉&ブッシュのよくわからない宙ぶらりんの壮年期を経て、ゆっくりと下り坂にさしかかっているのだと。もちろん、僕自身はまだまだ下り坂になるつもりはないけれど。

人間の覚悟 (新潮新書)

人間の覚悟 (新潮新書)

そんな今、日本から世界に向けて何を発信していくべきなのか。キリスト教イスラム教など一神教の世界観ではなく、熊野にあるような自然信仰や仏教、神など多様なものも一緒に受け入れるような世界観。言語で世界を分けるのではなく、言葉にならないもの、見えないものを大切にする精神性などが、これからますます必要とされているものであることは確かだと思う。

そう思うと、俳句のような世界の見方も気になってくる。空港の本屋でふと目についた「俳句」について茂木さんと黛まどかさんが語る本。僕も俳句についてはほとんど知らないのだけど、以前に初めてアジアを旅した時に「俳句のように写真を穫ろう」と思ったことがあったりと、なんとなく気になっているもの。すでにうろ覚えだけど、俳句とは自然や生命へのあいさつであり、世界の多様性賛美のようなものだとか、日常の中にみる悟りの感覚だとか、身の回りにある物を表現によって普遍性のあるものに高めたものだとか。形態は違えど、現代アートで「Micropop」の展示にも見られたものと思想としては共通するものかもしれない。この辺りはまだ考えがまとまってないのでまた追って…。