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KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

カンヌ広告祭体験記

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もう一月以上前になるカンヌ広告祭の振り返りレポート。会社向けに書いたのを載せておきます。

初めて行ったカンヌ広告祭。一週間、現地で世界の広告を見まくって、広告の現在と未来、「これからの広告に何ができるのか」を肌で感じてみたいと思っていました。そして実際、チタニウムとフィルム部門を中心にセミナーにも出まくり、いろんな人と深夜まで広告談義する日々。

まず感じたのは、ネットの発達でこれだけ情報が溢れている今、広告がいかに広告という枠を超えて目立てるかが問われているということ。広告かどうかとか、メディアも関係なく、見る側がいかに面白がれるか、体感できるか、参加できるか。広告がパブリックエンターテイメント化、パブリックアート化しているということ。そんな中で、いかに生活者を「エンゲージメント」させることが世界共通のテーマになっている。企業からの一方的な伝達から、生活者との対話へ。いかに参加させ、心を動かすか。セミナーを聞いていても、「ER」と表現の仕方は違えど、だいたい同じことを考え、同じ土俵で「BIG IDEA」を求めていることを実感。

サイバーとチタニウムで2冠を穫った(このブログにも貼ってた)「UNIQLOCK」は、まさにその典型例http://www.uniqlo.jp/uniqlock/?id=COtr58hr9uHPZVTd
ブログパーツというマイナーなメディアをベースに参加させ、時計というユニバーサルなものを広告にするというビッグアイデア。映像エンターテイメントであり、カタログであり、時計によって人をつなぐメディアアートでもある新しい形の広告を作った田中さんに素直に拍手!そして、そんな彼と気軽に話ができたのもカンヌに行ってよかったところ。ちなみに以下のは、リミックスバージョンのムービーか?

一方で、フィルムやプリントなどのトラディショナルメディアが、それはそれで白かったし表現の宝庫ではあったけど、メディアに縛られたモダンアートのように見えたのも正直なところ。個人的ドキドキ度で言えば、やっぱりHBOの「Voyeur」http://www.hbovoyeur.com/をはじめ、チタニウムや、アウトドア、プロモなどメディアに縛られない新しい形の広告が多かった。映像という視聴覚刺激はテレビにもウェブにもあふれてるからこそ、どこか手触りのあるリアルな体感ものに惹かれるのでしょうか。

フィルム部門でグランプリを穫った「Gorilla」は、個人的には以前にクリス・カニンガムによる猿がドラムを叩く映像もあったしそれほど評価してないんですが、この受賞のポイントはこれまでのように広告としてすっきり落ちているかどうかよりも、それ自体がコンテンツとして面白く、遊べるかどうかだったんだと思います。(「Gorilla」は、昨年グランプリの「Dove」や、バドワイザーの「WHASSUP!」のようにネット上でリミックスされ、バイラル化している)。

あと、広告手法の一つとして相変わらず有効だと思ったのがリアリティーもの。実際にある店舗でWHOPPERを一日発売中止にし、来店した一般人の反応を記録した(いわばドッキリもの)「BURGER KING FREAK OUT」などは個人的にも好きでしたが、他にも「COKE ZERO」など、マイケル・ムーアや『SUPER SIZE ME』系のドキュメンタリー映画を思わせる突撃リアリティーものは目立ちました。広告で下手なウソをついてもネット時代にはすぐばれるからこそ、本当のこと、リアリティーのあるものが力をもっているんだと思います。

もう一つ、目立ったのがソーシャルなテーマを扱った広告でした。
地球温暖化問題はもちろん、人種差別、貧困問題など、社会・政治的なテーマを扱った広告が多かった。去年の受賞作にも実際に発電できる屋外広告があったけど、今年チタニウムで受賞した残りの2作もそんな社会問題に対して、広告によって実質的に世の中をGOODに変えたものでした。しかも、もっと大規模に。以前にある本で「WEB2.0革命がボランタリー(自発的な)経済を増大させていく」というのを読んだことがあるけど、今、実際に世界的規模で環境や社会問題への関心や、「できることをしたい」「役に立ちたい」という善意も高まっていると思います。そんな中で広告は、人々の善意をネットやメディアをつなぎ、世の中を変えていくソーシャルムーブメントを作り出す可能性があるんだと改めて思いました。
http://www.canneslions.com/winners/titanium/win_22_1_00422.htm

「広告に見えない広告」「広告というよりも、いかに人をつなぐものができるかを考えている」というのはセミナーや、先の「UNIQLOCK」を作った田中さんから聞いた言葉。もちろん、i-phoneやMac Airみたいに画期的な商品や、サービス自体がはっきり役に立つものなら広告然としたものでいいだろうけど、そうでもないのに、ただメッセージを垂れ流す広告は、ますます情報の渦の中に埋もれるだけになっていくのでしょう。

これからの広告は、本当の意味でパブリックなものになっていくのではないか。企業が一方的に作っていた広告から、パブリックエンターテイメント、パブリックアート、ソーシャルムーブメントとしての広告へ。そんな中で僕ら作る側に求められているのは、いかに広告を企業のものから、人々に開かれたものにできるか。いかに広告自体で社会をもっとGOODに、FUNにしていけるかなのではないか……そんなことを感じたカンヌ広告祭でした。
いやー、いい刺激になりました。