KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

ドイツ現代アートトリップ


先日、初めてドイツで今行われている2つの国際的現代アート展と、現代ドイツ写真の聖地とも言えるデュッセルドルフへ行ってきました。
カッセルで5年に一回開催され、ベネチアビエンナーレと並んで世界で最も影響力を持つといわれている「ドクメンタ12」と、10年に一回開催される「ミュンスター彫刻プロジェクト」。今年はその両方が同時に開催されるアート好きにとっては、まさに惑星直列的な当たり年。ちなみに、今年は2年に一回行われるベネチアビエンナーレも同時開催中なので、時間が許せば、6月にあったカンヌ広告祭も合わせて4つ一緒に行きたかったけど、会社員じゃなかなか難しいっす。

「ドクメンタ12」現代美術展@カッセル(五年に一回!)(ドイツ大使館HPでの紹介
「ミュンスター彫刻プロジェクト」(十年に一回!)

詳しくは写真入りでTSのサイトの方でレポートしたいと思ってますが、とりあえずは簡単に感想まで。
ドクメンタ12」は期待したわりには、やや地味な印象。もともと、ベネチアビエンナーレに比べるとやや政治的だったり、社会的なテーマを打ち出すことが多いとは聞いていたが、やはり…という感じ。
目立ったのはやっぱり、これまであまり現代アートの舞台にはいなかった、アフリカとか中南米とか中東とかアジアとか、いわゆる第三世界の作家の台頭。ここでも9.11以降の世界、マルチカルチャリズムの流れは脈々と進行中だと感じる。いわゆるハイアートというよりも、かなり素朴な、ローファイな手法による作品も多く、まさにハイもロ−も混ざったフラットな状態。写真作品やビデオ作品も、僕なんかがあまり見た事のない現実が映っているので、それはそれで面白かったりするけど、技術的に稚拙だったりで、つい完成度を求めてしまうと物足りなく感じたりもする。
あと、まぁ、これはしょうがないけどスター不在。それこそA・ワォーホールやボイスがブレイクしたのはこのドクメンタが初めだったらしいけど、今はそういう存在がいない時代だということを改めて感じる。ボイスが18年前にこの展示で植えたという7000本の木が、そこかしこにあって、だいぶ育っていたのは感慨深かった。最後に、どうでもいいことだけど、ドクメンタのグッズのデザインは今イチで、買う気満々だったのに手が伸びず。サノケンとかがやったら、よっぽどいいものが出来て、きっとよっぽど売上げも上がっただろうに。


一方の「ミュンスター彫刻プロジェクト」は、「ドクメンタ」に比べてこじんまりとした街に作品が点在する小規模なものながら、1987年からの作品も残っているのと、ボイスに比べると名の通った(白人が多い)巨匠の作品が多いのでやっぱりそれなりに見応えはある。自転車を借りて、石畳の道やら公園の緑の中を探す感じはオリエンテーリングみたい。規模は違えど、自然や街とアートが共存してお互いを活性化する感じは、去年の越後妻有トリエンナーレにも似ている。B・ナウマンの逆ピラミッドや、ドミニク・ゴンザレス・フォレスターのミニチュア彫刻、勝手に物語を生成するプログラムの作品などが印象に残った。


最後に行ったデュッセルドルフは、A・グルスキートーマス・ルフトーマス・シュトゥルートなどここ数年話題のドイツ系写真の発祥の地。K20、K21など4つの大きな美術館へ行ってきた。K20では、我が日本の巨匠、杉本博司の大個展。去年、森美術館での展示とはまた展示方法が若干違い、あの海の水平線の写真がやや円形の壁に並ぶさまは圧巻。さすが。そして、より現代アート寄りのK21では、いきなり下の広いフロアにぶらぶらと勝手に動く、天井からつり下がった扇風機。もしや、と思ったらやっぱりオラファー・エリアソンの作品。以前にロンドンのテートモダンで見た人工太陽の作品「ウェザーリポート」を思い出す(いや−、あれはマジですごかった)。作品もなかなか充実していたけれど、一番上の階の吹き抜けのガラス天井がとにかく気持ちよかったのが印象に残った。


とにもかくにも、いろんなクリエイティブな刺激と、ドイツの深い森の自然エネルギーをもらってきました。ものつくる仕事である以上、こういうインプットは必要(その後、一週間であっという間にエネルギーは使い果たすことになるが…笑)。それにしても、これだけすごい展覧会が世界で行われていても日本ではほとんどニュースにもならないし、地球の歩き方にもガイドブックにも載ってないし、その辺りの「文化情報鎖国」ぶりはなんとかならんのか。もったいない…ちなみに上記の2つの大展覧会、9月末までやってるみたいなので、そっちの方に行くチャンスがあれば、マジで見ないと損です。いや、本当に。
とくに、ベネチアビエンナーレもそうだけど、こういう現代アート展を子供の時に見ると相当、自由な想像力をもった大人に育つと思う。ディズニーランドみたいな管理されたユートピアと違って、まさに何でもあり、人間の想像力の極地が見られるのだから。子供のいる方、是非連れて行ってみてくださいな。