KYODO HOUSE -Art of Living 近藤ヒデノリのブログ

クリエイティブディレクター\編集者\ソーシャルアクティビスト 近藤ヒデノリのブログ

現代美術って何? 横浜トリエンナーレ

身の回りでほとんどいい噂を聞かなかった横浜トリエンナーレに、ついに行って来た。東横線がMM(みなとみらい)線に乗り入れしてるので、思いのほかすんなりと会場に着く。

山下公園には早速コンテナが危なっかしくアーチ型に積み重ねられた作品があって、ちょっと胸が高まる。そして入口にはポスターにも使われているダニエル・ビュレンの赤と白の端が壮観。入口付近も埠頭という場を生かしてチケット売り場から何から青いコンテナだ。なかなかいい雰囲気でないか。ベネチアビエンナーレを思い出して、ちょっとわくわくする。

会場に入るとデカデカと「アートとは運動態である」という文字が踊り、そばには鉄骨で組まれた巨大な橋のようなものがあるが登らない。こういうところでは初めに体力を使ってしまうと後できつくなるから、体力温存。ちなみに横トリのポスターには「現代美術の祭典」「アートサーカス」とあるから、人はここに、あまりふだん馴染みのないアート/現代美術を期待して見に来るのだろう。ただ今回の場合、数は多けれど、ここにあるのはアートの限られた一面でしかない。

というのは、今回のトリエンナーレはもともと総合ディレクターだった磯崎新氏が直前になって降りてしまい、開幕まで時間のない中でアーティストの川俣正さんが引き継いだという経緯で、彼自身の作品の特徴でもある「完成系ではなく進行形」「サイトスペシフィック:その場に合った作品」というコンセプトを生かし「動きつづける展覧会」を目指したものだからだ。だから今回の展示のほとんどは途中であり進行中=運動態なのだ。

yokotori


まず、全体の感想から言うと、期待しないで行ったせいかけっこう楽しめた。面白い作品はたくさんあったし、埠頭の屋外で演奏されていた横トリラジオ曲のライブも気持ちよかったし、タコ焼きとかタイカレーとか飲み物も名古屋バンパクみたいなボッタくり感はないしおいしかった。少なくとも入場料はバンパクの半分以下。それだけの価値は十分にある!!!

ただ事前に周りの人が言っていたように、全体にいい意味でも悪い意味でも「文化祭」っぽい。よくいえば進行中、参加型で親近感がもちやすく、作家のエゴをあまり感じないから、開かれていて、祝祭的=いい意味で文化祭っぽい。逆にいえば、完成されていなくて(完成度が低くて)、どこまでが作品か分からなくて、素人っぽい=悪い意味で文化祭っぽい。

特に初めの3Aの部屋は悪い意味での「文化祭」度満載…。あそこでいきなりガクッと来てしまうのは、会場構成としてはどうなんだろう。いつも思うことだけど、こういうアートイベントで壁に細かく展示した博物館的なものや、ドキュメント的な長いビデオ作品をじっくり見ようという人はどれだけいるんだろう。

現代美術のひとつの流れとして体験型、参加型などプロセスをそのまま見せる作品は、僕もどちらかといえば旧態依然な完成され、固定された「作品」よりも好きな方だ。ただ、こういう作品は日常との差が曖昧だけに、どこからが作品なのか、どこが作品なのかが一般には分かりにくい。しかも、これだけそういうのばかり集まると、正直ちょっと飽きる…。前回の横トリだって、いろんな作家による「完成された」作品の合間に「とんちきハウス」などがあるから効いていたのだ。

ボランティアが多いこと、ひとりの作家ではなくグループによる作品が多いことも「文化祭」的印象に影響しているだろう。TSでインタビューした木村友紀さんにしても、彼女個人ではなく彼女を含む卓球チーム、COUMAとして参加している。それはそれで全体の狙いからくるのだろうから単純に批判してもしょうがないが、個人がじっくりとつくった作品を見たい気持ちがあるのも確か。
(会場では木村さんに久しぶりに会う。もっとも今日は元日本チャンプを読んでのトーナメントということで卓球しっぱなしだったが。もうちょっと卓球からインスパイアされてつくったものを見てみたい気もする。これも進行中だけに、もう少し後に行けば増えているのだろうけど。)

そんなこんなで印象に残った作品は以下のもの。やっぱりビジュアルアートだけにビジュアルに力があったもの、進行中にせよ体験型にせよ完成度が高かったものが印象に残った。

小金沢健人のビデオ作品
夜に輝く様々な企業のネオンをムービーで次々にコラージュしたビデオ作品は単純にクール。田中偉一郎のいろんな企業のロゴを組み合わせた「某合併」を思わず思い出す。

・屋代敏博の写真作品
床上を意味もなく回転しつづける彼自身の写真作品。立体写真の手法で見せるべく、三脚に乗せたルーペで点在させたのは秀逸な展示法だった。他にも種明かし的にケイタイやデジカメを使ってそのままビデオを見せていたのもよかった。

・高格さんの光の作品
ストーリーとかはわからなかったが、よくできた光の舞台美術を見た感じ。未完成とか素人っぽさが多い中でその完成度に惹かれただけなのかもしれないが。

・横トリラジオ曲のライブ
埠頭で行われていた3人による過激な音のライブ。ああいう場所だから出せる音。激しくて危険な感じがしてかっこよし。

・電話ボックスの作品
最近あまり見かけなくなった電話ボックスが並んでいる。そのひとつに入ると電話が鳴り、見知らぬおばさんからの声が聞こえてくる。会場で電話が鳴るという昔のオノヨーコの作品を彷彿とさせるが、密閉された場所で知らない人からの妙にリアルな声を聞くのはやっぱインパクトがある。

奈良美智さんの掘建て小屋の作品
さすがの完成度。奈良さんの描く世界観に合わせた掘建て小屋の中に彼の絵や、立体作品が。そこを歩いて抜けて出た埠頭の気持ちよさ。あの場でビールも売ってくれたらよかったが。

勢いで書いていたらえらい長くなった。
横浜ではトリエンナーレの他にもBANK ARTでのグループ展などあるから、
また近いうちに行ってみたいと思う。